■ランボルギーニ ウラカン ペルフォルマンテ スパイダー
ランボルギーニの歴史は、「ガヤルド以前と以後に分けられる」。・・というのはいま思いついたフレーズですが、同車は総生産台数が1万4000台を超えるという、ランボ史上桁違いにして破格の成功を収めた。1999年にアウディ傘下に移った新生ランボルギーニの頑張りはもとより、影に日向にサポートしてくれた「フォーリングズに感謝!」でありましょう。
そのガヤルドの後継モデルが、猛牛ハリケーンことウラカン。デビューから5年を経た現在は、クーペとスパイダーボディが用意される。パワーソースは5.2リッターV型10気筒のみだが、FRモデル(580ps)、4WD(610ps)、ペルフォルマンテ(640ps)と、それぞれチューンが異なる。最新のEVOは、空力をさらに向上させ、左右輪間でトルクを移動させるトルクベクタリングや後輪操舵の採用など、内外機能ともアップデートが図られた新世代ウラカンだ。
試乗車は、ウラカン ペルフォルマンテ スパイダー。つまりオープンボディのハイパフォーマンスバージョン。ベーシックモデルと比較して、洗練されたカーボン素材やアルミを多用して軽量化を図り、エンジンをパワーアップさせ、さらにALAことアクティブ・エアロ・ダイナミクス機能が採用された。これは、フロントスポイラー内や、エンジンフード下のエアダクトのフラップを開閉することでダウンフォースをコントロールするもの。コーナリング中には、リヤダクトのフラップが左右別々に作動するのがおもしろい。速度を保持しつつ内輪の荷重抜けを抑え、安定したコーナリングが期待できるという。
さっそくドアを開けて、運転席へ。クッションが薄く当たりが硬いシートにペタンと座る。低い。前後方向の調整が手動式なのが、軽量スポーツを意識させる。
ディスプレイタイプのメーター類、幾何学調のボタン類、ズラリと並んだトグルスイッチ群。ゲームから抜け出してきたような恥もてらいもない劇画調のインテリアが素敵。一方、ステアリングホイールやシートにバックスキン素材が用いられ、伝統的なイタリアンスポーツの香りも漂わせる。
電動ソフトトップは、50km/h走行時でも約17秒で開閉可能。あいにくの雨なのでクローズド状態で走り始める。ちょっと意外なのは、後方視界がちゃんと確保されていること。ようやくランボも、かつてのトヨタMR2に追いついた!? これなら日常使いも視野に入ろう。ただし左ハンドルのミッドシップマシンなので、右斜め後方はまるで見えない。ときには隣の乗員に、助手として本来の務めを果たしてもらわなければならない。
スターターボタンで火を入れた瞬間にひと吠えする自然吸気のV10は、最高出力640ps/8000rpm、最大トルク600Nm/6500rpmを発生。クーペボディのペルフォルマンテと同じスペックだ。10気筒はデュアルクラッチタイプの7速ATと組み合わされ、四輪を駆動する。
0→100km/h加速は3.1秒。クーペより0.2秒落ちだが、そのことに文句を言う人はいないだろう。派手なV10を回して走っていると、エンジンサウンドやエグゾーストノイズがソフトトップを通して空から降ってきて、運転者を喜ばせる。うーん、スパイダーを運転する醍醐味。
その気になればセカンドギアだけで100km/h超までカバーできるウラカンだが、一方で、トップギア7速1500rpmで、60km/h巡航をむずかることなくこなせる。あたかも実用ハッチを運転しているかのように。多気筒大排気量エンジンに多連装キャブで燃料を吸わせていたかつてのスーパーカーでは、考えられない気楽さである。ステアリングホイールを握りながら、「日常使いできるランボ」との印象が一段と強まる。ここでも、「フォーリングズに感謝」。
ステアリングホイール下部には、「STRADA」「SPORT」「CORSA」と切り替えるドライブモード選択ボタンが備わる。SPORT以上では「後輪駆動らしいオーバーステア気味のドライブ」が楽しめるそうだが、雨天での走行なので「なるほど」と感心するに留める。同様に、ペルフォルマンテ自慢の空力装置「ALA」が作動する恩恵を実感するのも、ニュルブルクリンク挑戦の機会まで取っておこうと思う。
助手を同乗させれば、日々の買い物にも使えるであろうオープンボディのベイビィランボ。価格は、3917万4885円である。
(※2019年12月現在、新規販売はEVOのみ)
走り:★★★★
コスパ:★
質感:★★★★
使い勝手:★★
<文=ダン・アオキ 写真=佐藤正巳 text by Dan Aoki photo by Masami Sato>
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