2019/12/10 コラム

お国柄を反映!? 北米仕様の「CX-30」がちょっとだけ車高が高い理由とは?

北米仕様のCX-30は少し背が高いマツダは、ロサンゼルスオートショー2019で、クロスオーバーSUV「CX-30」の北米仕様を発表した。
搭載されるエンジンは国内や欧州仕様には設定されていないスカイアクティブG2.5。販売地域向けの差別化が図られている。エクステリアデザインについては国内仕様との差異は見られないのだが、よくみるとフェンダーとタイヤの隙間が国内仕様よりもわずかに大きく、全体に車高が高く見える。じつはこれ、今回お披露目された北米仕様の車高は1567mmと、国内仕様より27mm高くなっているからだ。マツダは米国市場ではCX-30を「乗用車」のカテゴリーではなく、「ライトトラック」に分類する思惑があってのことだ。というのも米運輸局が定めるライトトラックカテゴリーのクルマは一定の最低地上高をクリアする必要がある。CX-30はそれに合わせるために北米仕様のみ車高が高くなったというわけだ。
そもそも国内仕様はタワーパーキングの使用を考慮して車高を1540mmに抑えている。欧州仕様もCX-30の開発当初から国内仕様のスペックをベースにスタートしている。車高が上がった北米仕様も、サスペンションの取り付け位置やナックルの取り付け角、ロアアームの長さを変えて、車高の低い他地域仕様と同じジオメトリーを保っている。車体とサスペンションの関係を変えることなくCX-30としてのクルマの挙動は同じにしているという。ではなぜそこまでしてアメリカではCX-30をライトトラック扱いにしたいのだろう? ”車高上げ”の最大のメリットは「CAFE(コーポレート・アベレージ・フューエル・エコノミー=メーカー別平均燃費)」のカテゴリー分けにあったのだ。CAFEは一定の省燃費の目標を各メーカーに課しており、目標に達しない場合にはメーカーに罰金を科すというものなのだが、その燃費基準が乗用車よりもライトトラックの方が若干甘く設定されているのだ。CX-30がCAFEでの分類が乗用車ではなくライトトラックカテゴリーに入り、CX-9やCX-5に加えてより燃費のいいCX-30を計算に加えることができるので、ライトトラックカテゴリーの排出ガスの平均値が下がるという効果があるのだ。

立体駐車場を考慮する必要がなく、存在感もアピールするため

CX-30の主査である佐賀尚人氏に聞いた。「開発当初はヨーロッパ、日本向けのデザインがオリジナルだったのですが、それぞれの地域のグローバル戦略を進めていくなかで北米仕様の車高が決まりました。国内仕様は機械式駐車場の利用を考え1550mm以下をクリア(10mmの余裕を持たせCX-30の車高は1540mm)させましたが、アメリカ市場ではその必要はありませんし。」バンパーやフェンダーの形状は同じなのでフェンダーアーチとタイヤの隙間が空いているように見えると質問を向けると「アメリカで求められるコンパクトクロスオーバーSUVは日本や欧州のものとは少し異なります。アメリカはSUVの発祥の地でもあり、またSUVがたくさん走っています。そのなかで存在感を出す必要があるので、あえて車高を高く見せ、オフロード感というプレゼンスを出しています。さらに国内ではルーフレールがオプション扱いで、黒く塗装されたものなのに対し、北米仕様ではシルバーで目立つものが標準装備され、よりSUVの雰囲気を出しています。実際にこちらで走ってみると、周りがSUVや背の高いクルマが多いので、たった1インチほどの違いでもアイポイントが高くなったことで、運転がしやすくなったという効果があります。」と語ってくれた。
また、ライトトラックカテゴリーにすることでリヤガラスを濃いスモークガラスにすることが可能とのこと。また、北米仕様のCX-30はタイヤサイズこそ同じだが、パターンはマッド&スノータイヤを履いているようで、クロスオーバーといってもどちらかといえば、よりSUVらしく仕上がっているようだ。 <文と写真=ケニー中嶋 text&photo by Kenny Nakajima> 

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