2019/10/22 ニュース

【ニューカー試乗記】ロングドライブでも疲れ知らずのコンパクトツアラー! シトロエン C3エアクロスSUV

シトロエンのSUV攻勢が日本市場でも開始された。C5エアクロスSUVに引き続き、コンパクトのC3エアクロスSUV(以下C3エアクロス)の導入も開始されたのだ。そこで早速2300kmほどテストに連れ出してみた。 

欧州でヒット作のシトロエンSUV

今回借り出したのはC3エアクロスの上級グレード「シャイン パッケージ」。パノラミックルーフやグリップコントロールなどが装備され、タイヤも195/60R16から215/50R17のマッド&スノータイヤ(テスト車はハンコックKINERGY4S 215/50R17スノーフレークマーク付)にアップグレードされていた。
●シャイン パッケージ

●シャイン パッケージ
走り出す前にC3エアクロスについて振り返っておこう。このプラットフォームはC3と共通のもので、先日発売されたDS3クロスバックのものよりも一世代前のものだ。従って安全運転支援システムも最先端ではなく、おもなものとしては、・アクティブセーフティブレーキ:前方の車輌や障害物を検知し、ドライバーが回避操作を行わない場合に自動的にブレーキを動作させる。作動範囲は約5~140km/h。約80km/h以下では停止車輌を、約60km/h以下では歩行者も検知する。・スピードリミットインフォメーション&リコメンデーション:走行中、車載カメラが道路標識の制限速度を認識してインストルメントパネルに表示する。・インテリジェントハイビーム:フロントウィンドウに設置された車載カメラで前方の状況を分析。対向車や前方車輌を検知した場合、自動でハイビームとロービームを切り替えて最適な視界を確保。・レーンデパーチャーウォーニング&ドライバーアテンションアラート:走行中に車線を検知し、ウィンカー操作をせずに車線からはみ出しそうになるとインジケーターと音で警告を発する。また、ふらつきを検知して居眠り運転の警告も行う。・パークアシスト:車庫入れや縦列駐車の際に、駐車可能なスペースを検知し、ステアリング操作を自動で行う。ドライバーはシフトチェンジとアクセル、ブレーキの操作だけで駐車が可能になる。・ブラインドスポットモニター:斜め後方のブラインドスポットに存在する後続車輌を超音波センサーで感知。ドアミラー内にオレンジ色の警告灯を点灯させる。などが備わる。前車追従のアダプティブクルーズコントロールや、車線をキープするレーンキープアシストなどは装備されない。
●シャイン パッケージ
パワートレーンは、2015年から18年まで4年連続インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーのクラス最優秀賞に輝いた、PureTech 1.2リットル3気筒ターボエンジンを搭載。最高出力110馬力/5,500rpm、最大トルクは205Nm/1,750rpmを発生し、アイシン・エイ・ダブリュ製電子制御6速オートマチックトランスミッション「EAT6」が組み合わされる。
●定評ある1.2リットル3気筒ターボエンジン。力強い加速力を持っている
ボディサイズは全長4,160mm×全幅1,765mm×全高1,630mm×ホイールベース2,605mm。対してエアクロスではない普通のC3は、全長3,995mm×全幅1,750mm×全高1,495mm×ホイールベース2,535mmと、C3エアクロスのほうがわずかずつ大きいことがわかる。SUVテイストを盛り込んだ結果、サイズアップにつながったのだ。
●C3とのサイズ比較。C3エアクロスのカッコ内数値が、C3に対して大きくなったサイズだ
リヤシートは6:4分割可倒式でさらにスライドとリクライニングが可能。中央席はセンターアームレストとしても使うことができる。このリヤシートは左右独立してスライドでき、前方に最大までスライドさせるとクラス最大級520リットルのラゲッジルームが出現する。ラゲッジ下のフロアボードを使い、リヤシートをすべて畳めば天井までの最大容量は1,289リットルまで拡大。さらに助手席を前方に倒せば、セミロングボード程度まで収めることも可能だ。
●シャイン パッケージのラゲッジルーム

●助手席シートは、前倒しが可能。長尺物を積むときには便利だ
現在先行して欧州で発売しているC3エアクロスは、2017年10月に開催されたフランクフルトモーターショーで発表されてから2019年4月末までで185,000台と、ヒットモデルとなっている。
●2019年4月の時点で、18万5000台のセールスを記録している
 

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乗り心地良く、視界は良好

では早速走り出してみよう。今回は首都圏の高速や一般道だけでなく、遠方にも足を伸ばしてみた。岩手・盛岡から山形・酒田、そして宮城・仙台を経由して東京へ戻るというロングドライブを遂行。合計で2300kmほどテストできた。
●シャイン パッケージ
まずは借り出した直後の第一印象から。ドアを開けてシートに座ると、その出来のよさに感動。ふわっとしたかけ心地でありながら、腰まわりをしっかりサポートしてくれる。これは長距離ドライブでも疲れなさそうな予感に溢れるものであった。
●シャイン パッケージのインパネ。四角いモチーフが随所にあしらわれ、C3との共通性も表現している

●シャイン パッケージのフロントシート

●シャイン パッケージのリヤシート
古いメルセデスと同じように、ジグザグなゲートが切られたシフトレバーをDへセレクトし、サイドブレーキを下ろしてスタート。こういったひとつひとつの所作は最近では少なくなったが、これから運転するぞという気構えにもつながるような印象だ。ゆっくりアクセルを踏み、走り始める。ストップ&ゴーでは若干ギクシャクした印象なのだが、それ以外ではエンジンとトランスミッションの相性はよく、小気味よくシフトアップダウンを繰り返しながら積極的に走ることが可能だ。
●シフトパターンはレバー前方に設置。ドライバー側にはUSB端子が見える

●シャイン パッケージとシャインに標準のスマートフォンワイヤレスチャージャー
交差点での右左折時の視界は比較的良好。Aピラーの位置が適切であると同時に、ドアミラーがドアにマウントされているため、特に右前方の視界が確保されているからだ。また、Cピラーに設けられたストライプの入ったウインドーも左右後方視界を確保している。さらにヒップポイントが高くなっていることからより視界は確保され、運転のしやすさにもつながっている。一方で左のドアミラー内にはサイドの下方を見るための小さなミラーが取り付けられている。これは少々小さくあまり役に立たないうえに、後方視界の妨げにもなりかねない。例えばミラーの下に改めて鏡面を取り付けるなど、再考を望みたい。
●Cピラーに埋め込まれたクォーターウインドー。ボーダー柄が入るが視界は確保されている

●サイドミラーはドアから生えているタイプ

●左サイドミラーには、小さなサブミラーが付属する
少し流れのはやい郊外路やバイパスで、アクセルをより一層踏み込むと、3000rpm以上で3気筒独特のエンジン音が聞こえてくるが、それとてほとんど気になることはない。それ以上に低速から高速域までエンジン音やロードノイズを含めた遮音性は優れたもので、このセグメントとは思えない出来だった。街中での乗り心地はしなやかで快適だ。荒れた路面などではそれ相応の振動は伝わって来ると同時に、若干ばね下の重さを感じるものの、決して不快なレベルには達することはなかった。
●ノーマル/スノー/マッド/サンド/オフの5モードの走行パターンを選べる「グリップコントロール」。それぞれの状況に応じて、トラクションコントロールの制御が最適化されるシステムだ。シャイン パッケージに標準装備

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どこまでも走っていけそうな直進安定性の高さ

高速道路に乗り入れると、このクルマの印象はさらに向上する。非常に足がしなやかでありながら、大きな入力でもボディがあおられることはなく、段差などでの突き上げも上手にいなしてくれる。市街地と同様、若干ばね下が重く、かつタイヤの表面が固い印象が伝わってくるが、それ以外は安定しており、特に直進安定性はズバ抜けたものを持っている。高速道路を500km程度であれば一気に駆け抜けることすら可能だ。それが出来るもうひとつの要因は、シートだ。前述したようにかけ心地の良いシートは、長時間座っていてもその印象は変わらず、一度シートポジションを決定してしまえば、そのままの姿勢でドライビングし続けることができた。
●シャイン パッケージ
パワーは必要にして十分。高速道路の比較的速い流れにも十分にリードできる実力を備えているとともに、その速度で何時間も巡行できるのは高い直進安定性のなせる業だ。一方、安全運転支援システムは決して充実しているとはいえないので、そこにこだわる人にとっては少し厳しい選択かもしれない。しかし、疲労という面でいえば安全運転支援システムが充実しているクルマと同様か、それ以上軽減できるだろう。
●パノラミックサンルーフは、シャイン パッケージに標準装備

●鮮やかなルーフレールもオシャレ
 

いまひとつ伸び悩む燃費

最後に燃費について触れておこう。市街地:7.7km/L(11.6km/L)郊外:12.1km/L(15.0km/L)高速:14.7km/L(16.4km/L)()内はWLTCモードという結果だった。全体としてWLTCモードを下まわったのが、テスト期間がお盆休みにかかってしまい渋滞が多かったためと想像される。高速をおとなしく走らせると20km/L台を示すこともあったが、全体としてはもう少し伸びてほしいというのが本音だ。
●メーターパネル。中央のディスプレイに燃費が表示されている
 さて、C3エアクロスを2300kmほどテストしてみての結果だが、驚くほど良く出来たコンパクトカー、いや、コンパクトというイメージには程遠い長距離ランナーの特性を備えたコンパクトツアラーと呼んでいいだろう。確かに安全運転支援システムでは物足りないものもあるのは事実だ。しかし、それ以上にクルマそのものの魅力にあふれるクルマであり、このセグメントを検討している人にとっては十分にショッピングリストにあげるのにふさわしいクルマといえるだろう。
●シャイン パッケージ
最後に、わずかではあるが16インチを履いたシャインをテストできたので、その印象を述べておくと、インチダウンしたために路面からの突き上げはわずかに減ったものの、高速での直進安定性は17インチのシャイン パッケージに軍配が上がる。従って使い勝手として街中が多い方にはシャイン、高速も重視する方にはシャイン パッケージをお勧めしたい。
●C3エアクロスのシャイン。16インチのホイールを装着する

●C3エアクロスのシャイン

●シャインとフィールには、195/60R16サイズのホイールとタイヤが装備されている
  <文&写真=内田俊一 text & photo by Shunichi Uchida>
 

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