2019/10/15 コラム

発売30年の節目に作業開始!“初代”A70スープラをレストアする【第5話:初期型だからサビやすい!?】


●リヤゲート開口部、雨どいの終点に溜まった雨水。ひと晩でこんなに溜まる。これが内側に溢れ出してインナーフェンダーやフロアパネルを腐らせるのだ。

初期型のみのウイークポイントなのか? 70全般そうなのか?

70スープラの同級生みたいな、初期型70型ソアラの部品がネットオークションへ出品されていると、うれしい半面ちょっと悲しくなる。説明欄に「1986年式3000GTを解体したときの部品」などと記されていると、線香の1本もあげたくなってしまう。一方、初期型70スープラのボディパネルがネットオークションに出ることはめったにない。多分みんなサビてしまったのだろう。ちょうどこの原稿を書いているときにエンブレムの残骸が付いたフロントエンドパネルが出品されていたのだが、やはり程よくサビていた。私のスープラのサビ穴も半端なものではない。ルーフのみならず、ライトまわり、リヤエンドパネル、トランク内部にもサビがはびこり、穴をあけている。いくら長らく沖縄で乗られていた個体だからといって、ここまで「地域差」が出るものだろか。私の白焼き脳ミソはある仮説に取りつかれた。「初期型70スープラは中期型以降に比べて格段にサビやすい」。
●エンジンフードにあるサビ穴。リトラクタブルヘッドライトの上側だ。雨天走行でリトラとフードのすき間から雨水が流れ込んだのか。

●70年代のクルマでもここまでフロントウインドーまわりがサビることはない。写真はピラー部だが、ルーフ方面にもサビはある。

●リヤパネルも各所がサビてまして。このクルマ、テールランプまわりもボディとツライチで雨水が溜まりやすい。

実際に中期型の70スープラと比べてみた

ボディ各部にあいたサビ穴をひとつひとつ塞いでいくと、なぜそこに水が溜まり、サビが発生したのか構造から原因もわかってくる。単刀直入に言えばクルマの設計そのもの──具体的は雨水対策に疑問を感じたのだ。この仮説を立証しようと、全国の旧車イベントで70スープラの中期型を詳細に観察してみた。仮説は正しかった。中期型以降はリヤハッチゲートの外周にもウエザーストリップが付くなど、防錆対策が強化されているのだ。なぜこのウエザーストリップを追加する必要があったのかと言えば、やはりそこが構造的に弱点だったからに違いない。まず大前提として、この世代から始まったボディパネルの徹底したフラッシュサーフェイス化の弊害に水が溜まりやすい理由があるような気がする。旧車イベントで70スープラより古い世代……27レビン、初代セリカLBなどを見ると、ウエザーストリップがゴツいゴム製である。一方、初期型70スープラのウインドーまわりには視覚的にボディと一体化した樹脂製のモールが付くのだが、これが経年劣化で縮んでしまい雨水が溜まり、やがて穴があく。また1960〜70年代車はボディとトランクフードのチリが大きいものの、そこに流れ込んだ雨水はテールランプ脇の太い水路(プレスライン)を通って確実に排出される。しかし初期型70スープラはリヤハッチゲートから流れ込んだ雨水が平滑だが雨どいの機能が低いバックパネルで行き場を失っている。最悪は開口部のゴムパッキンの裂け目からトランク内部に入り込み、トランクフロアをサビさせてしまう。とても高価で「トヨタ3000GT」とまで言われた初期型──「MA70」スープラがほぼ死に絶えたのは、このためではなかったのだろうか。デザインを優先したあまり雨水排出の設計が至らなかったという仮説である。実際、私のスープラは雨が降ると水がトランクフロアにたまり、リヤインナーフェンダーの袋部分には金魚が飼えるほどの水が溜まる。もちろん、そうした部位はボロボロにサビているのだ。
●イベント会場で見かけた中期型70スープラ・エアロトップ。リヤハッチゲートを開けてもらえないかとお願いすると……

●驚くべきことに、雨どいからバックパネルへの雨水排出溝が初期型より大きく(矢印)傾斜も十分。「ここに水なんか溜まんないよ」とオーナーさん。

●しかもリヤゲートの左右には防水のウエザーストリップが付いている(矢印)。初期型にはこれがない……

●コチラはトヨタ・セリカLBのリヤまわり。スープラと同じハッチバックタイプだが、開口部の雨どいがバックパネルの高さと同じで、ストレートに雨水を排出できる構造となっている。
(文と写真●オールドタイマー編集部・甲賀)>>どうゆうわけで沖縄からこのスープラがやってきたのかというと?https://driver-web.jp/articles/detail/19759/

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