2019/10/11 ニュース

【東京モーターショー2019】AIエージェント「YUI」を搭載したトヨタ「LQ」。人とクルマの意思疎通が可能な自動運転EV

AIエージェント「YUI」を介してクルマとつながる新時代の移動体験

トヨタは2019年10月11日、人工知能や自動運転など、人に寄り添う新しい技術により「新しい時代の愛車」を具現化したコンセプトカー「LQ」を公表した。

■主要スペック

全長×全幅×全高:4530mm×1840mm×1480mmホイールベース:2700mm乗車定員:4人パワートレーン:EV車両重量:1680kg航続距離:300km程度LQは、2017年1月のCESに出展した「TOYOTA Concept-愛i」で表現した未来の愛車体験コンセプトを忠実に実現。米国で人工知能や自動運転・ロボティクスなどの研究開発を行うToyota Research Instituteと共同開発したAIエージェントや自動運転を搭載している。このLQは、東京モーターショー2019のメガウエブ会場で開催される「FUTURE EXPO」に出展される。トヨタは、クルマによる移動には文字どおりの移動だけでなく心の移動(感動)も含まれており、「移動そのものが感動をもたらすものであってほしい」、「クルマは”愛”がつく工業製品であり続けてほしい」と考えている。
そんな思いを体現するのが、このLQだ。開発にあたって、”Learn,Grow,Love”をテーマに、ユーザーそれぞれの嗜好や状態に合わせた移動体験の提供をつうじて、時間とともにより愛着を感じられるモビリティを目指した。「LQ」という車名には、新しい時代の愛車(Beloved Car)を提案するきっかけ(Q/Cue)になればとの思いが込められている。開発責任者の井戸大介氏は、「遠く離れた場所に連れて行ってくれて、特別な体験をさせてくれるクルマは、かつて『愛車』と呼ばれていました。技術革新やライフスタイルの変化に伴い、お客様のニーズや感動のきっかけが多様化するなか、モビリティエキスパートであるAIエージェント『YUI』によって、1人1人のニーズに合わせた特別な移動体験を提供できれば、新しい時代でもクルマは『愛車』であり続けると考えています」とLQの開発を振り返っている。ちなみに2020年6月から9月に、AIエージェント「YUI」を搭載したLQの試乗会、「トヨタYUIプロジェクトTOURS 2020」を実施予定。事前に公開されるスマホアプリから趣味・嗜好を「YUI」に教えることで、ひとりひとりに最適化した「YUI」が搭載されたLQに試乗できるとのこと。

■トヨタYUIプロジェクト TOURS 2020の概要

期間:2020年6〜9月(予定)場所:東京都 メガウエブおよびお台場・豊洲周辺の公道応募方法:詳細は今後特設サイトに掲載予定特設サイト:https://toyota-yuiproject.com/

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モビリティエキスパートAIエージェント「YUI」とは?

「YUI」は、つねにユーザーの表情や動作から感情や眠気などの状態を推定し、会話を中心としたコミュニケーションに加えて、覚醒・リラックス誘導機能付きシート・音楽・車内イルミネーション・空調・フレグランスなどの各種HMI(Human Machine Interface)を用いて働きかけ、安全・安心・快適な移動に貢献する。またシーンや嗜好に応じた音楽の選曲・再生や、興味のある話題や施設情報を提供することで移動自体を楽しむサポートを行う。
例えば、スポーツ好きのユーザーAがLQに乗っていたとする。高速道路を移動中、「YUI」は「Aさんはあと20km走ると眠くなりそうだ」という情報をあらゆるセンサーから検知する。15km先にはサービスエリアがある。眠くなる前に休憩するには5km足りない……といった状況で、「YUI」は「このあたりにスポーツ施設があって、今日は試合があるみたいですね」とユーザーに話しかけたりするのだ。その間も、覚醒させるために特殊なシート(後述)を稼働させたりと、安全な移動をサポートしてくれるという。ちなみにこの「YUI」という名称。漢字の「結」(人とクルマを結ぶ)や、「you & I」などの意味が込められている。日本だけでなく、グローバルで呼びやすいものから選択されたという。「YUI」の開発およびサービス向上のため、下記企業が協力。将来はユーザーのスマホなどクルマ以外の端末やほかのサービスとの連携を進め、サポートする領域を拡大していくという。

■協力企業

・JTB:ユーザーの嗜好に適した施設案内情報やドライブルートの提供・AWA:クルマの状況やユーザーの嗜好に適したストリーミング音楽の提供・NTTドコモ:試乗拠点に5G基地局を設置し、高速かつ安定した通信環境の提供

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「安心・安全」、「快適」な移動体験を支える技術とは

1)自動運転自動運転(SAEレベル4相当)の機能を搭載2)無人自動バレーパーキングシステム ※パナソニックとの共同開発駐車場において、乗降場と駐車スペース間で無人自動運転ができるシステムで、駐車スペースを探す必要がなくなり、高齢の人、身体の不自由な人、妊娠中や乳幼児を連れたユーザーなどアクセシビリティに配慮が必要な人に加えて、駐車が苦手な人の負担を軽減。また隣接する車両と20cm間隔で駐車できるため、駐車場の省スペース化に貢献する以上を実現するため、車両に搭載した複数のカメラ・ソナー・レーダー・2次元路面マップを用いて車両の現在位置を特定するシステムと駐車場に設置したカメラ、自動バレー駐車を指示する管制センターを連携させ、駐車場内での入庫と出庫を無人で行う。車両のセンサーと駐車場のカメラが自動運転経路へのほかの車両や歩行者の進入を監視しており、ほかの車両や歩行者を検知した場合は自動で停車する。3)AR-HUD ※パナソニックとの共同開発AR表示ができるHUD(ヘッドアップディスプレイ)によって、HUDの情報表示エリアを拡大。ドライバーの視線移動を低減し、安全運転を支援する。4)覚醒・リラックス誘導機能付きシート(世界初) ※トヨタ紡織と共同開発ドライバーの状態に合わせて、シートに内蔵した複数のエアブラダー(空気袋)や送風機能によって、覚醒やリラックスをサポート。ドライバーが眠気を感じている場合は、シートバック内のエアブラダーを膨らませることで背伸びのような姿勢をサポートするとともに、シート空調の冷風刺激によって覚醒を促す。一方、自動運転モードなどリラックスできるときは、エアブラダーを徐々にゆっくりと膨張・収縮させ腹式呼吸をサポート。より深いリラックスへと誘導する。

そのほかの先進装備・技術について

1)新しいHMI機能これまで車両と乗員が情報をやり取りする接点ではなかった車両のルーフやフロアマットをHMI領域として活用し、乗員により直感的でわかりやすく情報を伝達。具体的には、ルーフやフロアマットのなかにイルミネーション機能を搭載することで、自動運転モードと手動運転モードで異なるカラーを点灯させたり、「YUI」が話しかけている乗員のフロアマットをわかりやすく発光させたりできるのだ。
●ルーフには光ファイバー
また、ドライバーに路面状況を知らせたり、車内外のコミュニケーションの手段として、ヘッドライトに内蔵された100万個の微小なミラーの切り替えによって複雑な図形や文字を路面に描画できるDMM(Digital Micromirror Device)式ヘッドライトを搭載している。
●さまざまな図形や文字を照射可能

●ヘッドライトの点灯パターンも何種類かある
2)有機ELメーター(トヨタ初)メーターにトヨタ初となる有機ELディスプレイを採用。高い視認性を確保しながら、ディスプレイを大きく曲げることで先進的なインパネ造形を実現している。

3)大気浄化塗料 ※アイシン化工、キャタラーと共同開発オゾンを酸素に分解する新開発触媒塗料をラジエターファンに塗ることで、車両走行時に光化学スモッグの原因となる地表付近のオゾン(対流圏オゾン)を分解するという。なおこの技術は”走れば走るほど、空気がきれいになるクルマ”(マイナスエミッション技術)としてトヨタは期待しており、今後は市販車両への搭載を検討しているとのこと(トヨタは、1,000Lの待機中に含まれるオゾンの約60%を1時間で浄化する効果を確認しているという)4)デザイン外観デザインには、キャビンを前出しした未来的シルエットを採用。車両中央にある「YUI」を起点に車両内外をシームレスに連続させる「INSIDE OUT」がデザインテーマだ。ドアの下部もガラス面とすることで、ドア部分と車内空間がつながり、より洗練された造形が見せ場だ。

内装では、エアコン吹き出し口を乗員から見えない場所に配置し、シンプルな装い。センターコンソールは、トポロジー最適化という設計手法と3Dプリンター工法の組み合わせにより、強度確保と意匠に分かれていた構造を一体化。ユーザーから見える支持構造体を減らすことで、先進的な車内空間を実現している。
〈文=編集部・柿崎 写真=佐藤正巳〉 

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