2019/09/18 ニュース

なぜ後席は狭くなった? 新型カローラ&カローラツーリング登場

 

カローラスポーツと同じ顔のセダンとワゴン

トヨタは2019年9月17日、コンパクトセダンのカローラを名称変更とともにフルモデルチェンジし発表・発売した。同時にワゴンの「ツーリング」も発表。価格はカローラが193万6000円から、カローラツーリングは201万3000円から。
●カローラ ハイブリッドW×B

●カローラツーリング ターボW×B
1966年にデビューした「プラス100ccの余裕」の初代から、国民的大衆車として長く親しまれてきたカローラ。今では世界中の人々に愛され、150以上の国と地域で販売されているグローバルカーとして成長した。歴代の総販売台数は4750万台にまで及ぶ。そのカローラがモデルチェンジを迎えた。ひと足お先にデビューしていたハッチバックボディ「カローラスポーツ」と同じ顔のデザイン。そして一番のトピックは新プラットフォームと、日本専用ボディの採用だろう。

この動画で、内容ほぼわかります。ぜひご覧ください。 

なぜ3ナンバー化にGOサインが出たか?

長らく5ナンバーサイズのコンパクトセダンとして親しまれてきているカローラにとっては、3ナンバー幅にまでボディを拡大することは死活問題だった。だが一方で、現行プリウスから始まったTNGAと呼ばれる新しいプラットフォーム「GA-C」は、3ナンバー専用設計。さあ、困ったカローラ開発陣。そこで持ち上がったのが、大ヒットを記録した3代目プリウスだった。
●リヤのコンビランプは、テールとストップランプだけがLEDとなる
 3代目プリウスは、3ナンバー幅のボディながら多くの人々に受け入れられて、販売台数を増やしていった。その全幅は1745mm。5ナンバーサイズと呼ばれるギリギリのサイズが1695mmなので、50mm広い。それでも多くの家の車庫に収まったということになる。
●カローラ ハイブリッドW×B。トランクリッドの後端に小さなスポイラーが備わる

●カローラツーリング ターボW×Bのリヤ。テールランプの形状はスポーツと似ているが、ナンバープレートがリヤゲートに位置する。リヤゲートは樹脂製で軽量に仕上がっている

●ヘッドライトやグリルなど、カローラスポーツと共通部品も多いが、フェンダーやバンパーは専用設計
一方、すでにグローバルモデルと同じ仕様で販売しているカローラスポーツは、全幅1790mm。これでは広すぎて車庫に入れられない家も出てくる可能性が高い。そこで、今回のカローラ&ツーリングには、3代目プリウスと同じ1745mmの全幅が与えられることになった。
●登場するなり爆発的に売れた3代目プリウス。新型カローラはこのプリウスとほぼボディサイズが変わらない。まだ乗られている方で、乗り換え検討の方は、カローラがオススメです!
多くの家庭に受け入れられた、3代目プリウスのサイズ。これをカローラに当てはめるというのが、開発陣の出した答えだったのだ。  

なんて贅沢な、日本専用設計ボディ

新型カローラ&ツーリングのベースは、すでに世界の市場で販売されている、カローラスポーツと同じサイズのセダンやワゴン。1745mmにすると言うのは簡単だが、大手術前提だった。
●従来型とのサイズ比較。全幅は50mm増えているが、ミラー格納時は10mm増にまで抑えられている
45mm狭い日本専用設計にするため、サイド部分はほぼすべてを作り変える手間のかけよう。ボディのサイドパネルはすべて専用デザインにしナロー化している。ドアも薄型されると同時に、その中身まで専用に設計し直された。例えば、衝突安全装備のサイドインパクトビーム。ドア内にうまく収まり、ウインドーの開閉にも干渉しないよう、パイプ径を細くする代わりに肉厚な素材を使って強度を保った。また、ドアの内装パネルは後端を16mm薄くされ、乗降性を削がないようにもしている。
●色のついた部分が、国内専用に設計されたパネル。フロントのフードとフェンダーも専用にデザインされている

●ドアミラーは畳んだ状態での出しろを重要と考え、専用設計された。格納時は従来型から片側5mmプラスまで抑えられている。取り付け位置も変更され、グローバルモデルから16mm持ち上げ、17mm内側に寄せている。ボディとの隙間が狭くなり風切り音が大きくなるので、本体内側にフィンを装着し音対策をしている

●45mmを削るために開発陣が苦労した、専用設計部品。ドアミラーはおもに位置を変更し、ドアは外板だけでなく中身も専用で作られている

●ドアトリム、テールランプはともに薄型化。ドアトリムは乗降スペースの確保、テールランプは熱対策が苦労したそうだ

●手前がグローバルモデルのテールランプ。少し立体的な形状に対し、国内仕様は平面的に処理し全長を4500mm未満に抑えた。このあたりの専用設計も贅沢な部分だ
ここまで手が入れられると、もう別のクルマを作っている感覚だろう。しかし、国民的大衆車でありトヨタを代表するブランド「カローラ」に対して、一切妥協はなかったようだ。

  

なぜ? 後席スペースが30mm縮小したわけ

各サイズ、従来型に比べサイズアップし立派になったカローラ。しかし、1箇所だけ小さくなった部分がある。それはフロントとリヤの前後カップルディスタンス。リヤシートのひざ前スペースが30mmも短くなっているのだ。
●ハイブリッドW×Bのインパネまわり。白黒の2トーンからはW×Bの専用カラー。センターのディスプレイはオプションの9インチが備わっている
なぜこんなことになったのか。従来型から全長が95mm(ツーリングは85mm)、ホイールベースは40mmそれぞれ拡大しているのにも関わらずである。
●リヤシートは、アップライトな姿勢が強いられる。足元のスペースにも余裕はあまり感じられなく、前席の背もたれが迫っている
 その理由はフロントシートの位置にあった。GA-Cはシートポジションが低く低重心化が図られていることが特徴。座面が低い分、足は前方に投げ出されたようなポジションとなった。さらにペダル配置とドライビングポジションを適正化した結果、前席は従来型比で65mmも後方にセットされてしまったのだ。スペースに限りがある以上、これでは当然リヤシートにしわ寄せがくる。事実、リヤシートはフロントに比べ体が起こされたような着座姿勢になり、長距離移動は疲れそうだ。加えて、W×Bのスポーティシートだとフロントのバックレストが大型のため、リヤシート乗車時は前方の視界があまりよくない。窮屈な感じが否めない印象だ。
●W×Bのスポーティシートは、シートサイズ自体が大きく、座りやすい。だが、この大きさが後席にとっては圧迫感に繋がる
しかし、大人が座れないかと言われればそんなことは決してないし、もっと言えば同クラスのライバル「マツダ3」と同レベルの広さだ。開発陣は特にコメントを残していないが、リヤの広さを犠牲にしてでも、ドライビングポジションにこだわりたかったのかもしれない。適正なドラポジは安全運転にもつながる。より多くの人が適正なドラポジをとれることによる、安全のほうが優先されたのだろう。 

乗り心地の良さは、特筆モノ

カローラスポーツと同時に開発された新型ショックアブソーバー。もちろんカローラ&ツーリングにも採用されているのだが、わずか1年でセッティングを変えてきた。これはもちろんカローラのキャラクターに合わせたものではあるが、驚いたのはスポーツの一部改良にも同じダンパーが装備されたことだ。
●新開発ダンパーは、カローラスポーツ導入時からさらにアップデート。減衰初期をソフトなあたりにしながら、フロントの回頭性は高められている
発表会場の外でチョイ乗りできる機会があったので、とりあえず3種のエンジンすべてに乗ってみたのだが、どのモデルも乗り心地のよさが印象的だった。初期のスポーツよりも明らかに柔らかい。路面のショックが直接ガツンと伝わることはなかった。話をうかがった足まわりの開発陣は、カローラスポーツよりも「柔らかくしている」と答えてくれた。ドイツ車のようなカッチリした乗り心地が印象的だったのが初期のカローラスポーツ。しかし、そういった硬めの乗り心地をよしとする人が、カローラのユーザーにはあまり多くない。その理由から衝撃吸収をしやすい柔らかさにリセッティングされたのだ。石畳のような路面も走ったが、一言で言ってしまえば「ドイツ車よりもフランス車に近い乗り味」だ。衝撃はしっかり吸収するが、決してフワフワしているわけではなく、しっかりコシのある乗り心地。一般道や高速道路では速度域が違うのでなんとも言えないが、少なくとも低速域でもしっかりとした乗り味を持っていると確認できた。なかでもツーリングのハイブリッドモデルが一番フラット感があり、乗り心地がよく感じた。これは開発陣も同じ印象らしく、「一番オススメできる組み合わせ」だと答えてくれた。この理由は、セダンの廉価グレードにはないリヤスタビライザーが備わっているのと、ハイブリッドシステムのバッテリーがリヤシート下に収まり、前後重量配分が5:5に近づくためだそうだ。 

LINEカーナビは標準装備で使用可能

ナビゲーションシステムの多彩さもカローラ&ツーリングの注目ポイントだ。
●9インチのディスプレイは、6スピーカーとセットで2万8600円のオプション。全グレード装備可能だ。標準は7インチのディスプレイ。9インチにすると、1.7倍画面が大きくなる
まず、ナビゲーションは標準装備されていないのは、一般的なクルマと同様。違いは、オーディオに大型画面が付随した「ディスプレイオーディオ(以下DA)」というシステムが全グレードに標準装備される点だ。これは簡単にいうと、ナビの画面だけが標準で付いてくるので、中身のナビソフトは選んで買ってください、というシステムだ。DAには7インチディスプレイと4スピーカー、そして本体内にはラジオとSDL(スマートデバイスリンク)と呼ばれる、スマートフォン接続用のソフトが備わる。このSDLというのが注目の機能で、スマートフォン内の対応アプリを起動し、DAの画面上で操作できるようになるソフトだ。
●標準装備の7インチDA。スピーカーは4つ

●9インチのDAはオプション。6スピーカーとセットとなる
つまり、スマートフォンさえ持っていれば、ナビを買わなくても済むということ。今のところSDLに対応したナビソフトは、トヨタが提供するTCスマホナビと、新登場のLINEカーナビのみ。この2つは無料で使用可能ということだ。特にLINEカーナビは、音声認識機能も備えている優れもの。これから注目のアプリだ。SDLで直接使用できるアプリがまだ少ないが、ここは時間の問題で今後はもっと増えていくだろう。
●ディスプレイオーディオに備わるスマートフォンの接続アプリ「スマートデバイスリンク」は、対応アプリを直接起動させることができる。写真は新登場のナビアプリ「LINEカーナビ」

●スマートデバイスリンク(SDL)はAppleでもAndroidでも、関係なく対応するところが特徴。接続すると独自の画面表示にはなるものの、アプリを立ち上げてしまえばあとは普段どおりに動かせる。LINEカーナビは、トヨタの地図データとLINEの音声認識を合体させたアプリなので、信頼性も高い。「ねぇ、クローバー」と声がけして起動させるが、まだ音声認識は甘い部分がある。これからの進化が楽しみなナビアプリだ
スマホナビなんかではなく、ちゃんとした今までのナビでなきゃダメ! という人もいるだろう。そんな人にも従来通りのTコネクトナビがしっかりと用意されている。しかも一番高いものでも11万円と、かなりリーズナブル。しかもTコネクトの通信料は5年間無料という特典まで付いてくる。これもこれで、魅力的な選択肢といえるだろう。もちろん今までのスマートフォン用接続ソフト「Apple CarPlay」と「Android Auto」も利用できる。こちらはフルセグTVチューナーとセットで3万3000円のオプション設定だ。
●自動ブレーキは自転車にも対応する最新式(画像はRAV4)

●自動ブレーキは夜間の歩行者に対応(画像はRAV4)
 

日本のスタンダードは、超高機能!

大きく、立派に生まれ変わったカローラ。そしてカローラツーリング。ハード面でもソフト面でも、今のトヨタの最先端機能がふんだんに盛り込まれたクルマだということが、おわかりいただけただろう。これが、新しい日本のスタンダード。そう思うと、これからもっと進化していくクルマたちを見るのが楽しみになってくる。カローラは日本の景色を変えるクルマだと、発表会では言っていたが、決して大げさなことではないのかもしれない。
 <写真=澤田和久 文=編集部・青山>
●価格とバリエーション(価格は消費税率10%込み)カローラ■ハイブリッド(1.8リットル+モーター・CVT)ハイブリッド W×B     275万円ハイブリッド S       257万4000円ハイブリッド G-X     240万3500円※4WD車は19万8000円高■ガソリンターボ(1.2リットルターボ・6速MT)W×B          240万9000円■ガソリンNA(1.8リットル・7速CVT)W×B          231万5500円S             213万9500円G-X            193万6000円カローラツーリング■ハイブリッド(1.8リットル+モーター・CVT)ハイブリッド W×B     279万9500円ハイブリッド S       265万1000円ハイブリッド G-X     248万500円※4WD車は19万8000円高■ガソリンターボ(1.2リットルターボ・6速MT)W×B          245万8500円■ガソリンNA(1.8リットル・7速CVT)W×B          236万5000円S             221万6500円G-X            201万3000円   ●主要諸元■ハイブリッドW×B(FF・CVT) 【寸法・重量】 全長:4495㎜ 全幅:1745㎜ 全高:1435㎜ ホイールベース:2640㎜ トレッド:前1510/後1520㎜ 最低地上高:130㎜ 車両重量:1370㎏ 乗車定員:5人 【エンジン・性能】型式:2ZR-FXE 種類:直4DOHC 総排気量:1797cc ボア×ストローク:80.5×88.3㎜ 最高出力:72kW(98ps)/5200rpm 最大トルク:142Nm(14.5㎏m)/3600rpm 使用燃料・タンク容量:レギュラー・43ℓ WLTCモード燃費:25.6㎞/ℓ 最小回転半径:5.3m 【モーター・性能】型式:1NM 種類:交流同期電動機 最高出力:53kW(72ps) 最大トルク:163Nm(16.6㎏m) バッテリー:リチウムイオン 【諸装置】サスペンション:前ストラット/後ダブルウイッシュボーン ブレーキ:前Vディスク/後ディスク タイヤ:前後215/45R17 【価格】275万円(消費税率10%込み)■ツーリング ターボW×B(FF・6速MT) 【寸法・重量】 全長:4495㎜ 全幅:1745㎜ 全高:1460㎜ ホイールベース:2640㎜ トレッド:前1510/後1520㎜ 最低地上高:130㎜ 車両重量:1320㎏ 乗車定員:5人 【エンジン・性能】型式:8NR-FTS 種類:直4DOHCターボ 総排気量:1196cc ボア×ストローク:71.5×74.5㎜ 最高出力:85kW(116ps)/5200~5600rpm 最大トルク:185Nm(18.9㎏m)/1500~4000rpm 使用燃料・タンク容量:レギュラー・50ℓ WLTCモード燃費:15.8㎞/ℓ 最小回転半径:5.3m  【諸装置】サスペンション:前ストラット/後ダブルウイッシュボーン ブレーキ:前Vディスク/後ディスク タイヤ:前後215/45R17 【価格】245万8500円(消費税率10%込み) 

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