2019/08/29 ニュース

トヨタとスズキが資本提携を発表。変革期を乗り切る道筋を立てる!?

「この指とまれ」のかけ声で、業務提携から資本提携に発展した、トヨタとスズキの関係

夏が終わろうとする2019年8月28日、トヨタ自動車とスズキが相互で株式を保有する資本提携に合意したと発表した。すでにトヨタとスズキは、2017年2月に業務提携に向けた覚書を締結、2019年3月には新たな協業検討に合意していて、その時点から具体的な検討に着手していた。トヨタが持つ強みであるハイブリッドを含む電動化技術とスズキの小型車技術を持ち寄って、新たなフィールドで共にチャレンジしていくとしていたから、業務提携から発展した今回の資本提携は、自然な成り行きだったともいえる。これによって主要国内メーカーは、トヨタグループと、ルノーと日産と三菱のルノー日産グループ、未だ独身のままのホンダと3グループになったわけだ。トヨタはすでにダイハツを子会社化しているし、日野には50.2%、スバルには16.8%、マツダには5.1%出資している。今回スズキには4.94%出資するというからマツダに次ぐ規模だ。マツダとスズキに共通するのは、CASE〈Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(シェアリング)、Electric(電動化)〉によるクルマの変革の時代への対応でトヨタに協力を仰ぐということ。マツダとスズキはCASEについては自社開発だけでは世界から取り残されてしまうという危機感があった。トヨタと資本提携することで、自社だけが100年に1度といわれる変革から取り残されるという、危機的な状況から一歩抜け出ることになったわけだ。
●トヨタの豊田章男社長(左)とスズキの鈴木 修会長(2016年10月撮影)
トヨタの豊田章男社長は、2019年6月に発表されたクラウンとカローラスポーツの発表会において、トヨタが自動車メーカーから「モビリティーカンパニー」に変わることを宣言した。そのプレゼンテーションの最後に豊田社長は、小さなステージ上で指を高く突き上げて「この指とーまれ」と叫んだことが脳裏に焼き付いている。いい技術があっても“仲間”がいなければ世界は動かせない。トヨタは仲間を増やす努力を続け、スバルとマツダ、スズキはトヨタの仲間としてCASEに対応していく道を選んだ。スズキがその“指”にとまるのも当然のことなのだ。スズキの鈴木 修会長は、CASEとは別にスズキの将来の道筋を、どうしても自身の手でつけたかったはずだ。というのは、2009年にフォルクスワーゲンと資本提携をしたものの両社の思惑がまったく違い、2015年には提携を解消した。この資本提携は鈴木会長の勇み足だったとの批判が噴出したが、次世代の環境技術に対応するために大手と組むというのは理解できた。だがフォルクスワーゲンはスズキの舵取りをできると考え、スズキは独立性を保ったまま環境技術を手に入れられると思っていた。この苦い経験を経て、トヨタとの資本提携に至る。これで将来の道筋がつき、鈴木会長は肩の荷が下りた心境だろう。 
●豊田章男社長が2018年6月の新車発表時、「自動車メーカーからモビリティカンパニー」に変わることを宣言。いい技術を生かす”仲間”にスズキが新たに加わった
<文=丸山 誠> 

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