2019/08/23 ニュース

新型BMW X5試乗。 その中身は快適で燃費優秀な優等生SUV

 BMWのSUV(彼ら流にはSAV)の先陣を切って1999年にデビューしたX5が、フルモデルチェンジし4世代目となった。つい先日X7がデビューしたこともあり、少し影が薄くなってしまった感があるので、ここで500kmほどテストに連れ出してみた。また、商品担当にも話を聞くことができたので、今回のフルモデルチェンジのポイントなども合わせてレポートする。

全幅はBMWラインアップ中で最大!

現在日本仕様として用意されるX5はxDrive 35dの1車種で、スタンダードとMスポーツの2グレードだ。そのうち今回のテスト車はMスポーツであった。従ってタイヤサイズが265/50R19から、前275/45R20、後305/40R20(テスト車はオプションの前275/40R21、後315/35R21 ピレリ P ZEROを装着)へと変わり、また、各走行モードにおいて任意の設定および電子制御による自動減衰調整が可能なアダプティブMサスペンションや8速スポーツAT(スタンダードは通常の8速AT)が搭載されるほか、内外装がMスポーツ仕様となっている。
●タイヤ&ホイールはオプション設定の21インチ仕様が装着されていた
BMWの広報車が置いてある地下駐車場はそこそこの広さがあるのだが、そのなかでもこのX5はかなりの存在感を放っていた。それは白というボディカラーはもとより、ボディサイズが先代よりも全長で25mm、全幅は65mm、全高10mm、ホイールベースは40mmサイズアップされ、4935×2005×1770mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2975mmとなったことが大きい。特に全幅はX7よりもワイドでBMWラインアップ中最大である。通常クラスが上になるほどサイズは大きくなるのが常であるが、X5の全幅は、ボディに抑揚を持たせ、よりスポーティに見せたいというデザイン意図を組んだためよりワイドになったのだ。特にリヤまわりのボリューム感は相当なものである。
●日本国内に導入されているのは、現状ディーゼルモデルのみ

 

Mスポーツでも快適な乗り心地

細かいエンジンスペック等は後々述べることとして、さっそく走り始めてみよう。グルグルとらせん状のスロープを上り地上にはい出るまでに気付いたことは、先代とは乗り心地が大きく変わったことだ。どちらかというとエアサスのようにふわっとした印象で、先代の「引き締まっていると同時に、突き上げ感とばね下の重さが感じられる乗り心地」からは一変した。この理由はボディ剛性が高められたことが大きい。具体的には車両前方の骨格に高張力鋼板をより多く使用し、強度が高められたのだ。同時に約15.5kgの軽量化も実現。つまり、大きな入力に対しボディがしっかりと受け止められるので、その分サスペンションの動きを自由に設定できるようになったのだ。同時にわずかではあるが先代で感じられたエンジンの微振動もほとんど感じられなくなった。
それにしてもSUVとは思えないファットなタイヤを履きこなしているのは見事としかいいようがない。これまでMスポーツ仕様に乗る際にはある程度乗り心地に犠牲を払う必要があったのだが、現行5シリーズあたりからかなりその印象は変わってきており、一方でこれまでの少しスパルタンな乗り心地を懐かしむ声も聞こえそうだ。 

街中での使い勝手は向上したが……

ゆっくりと混んだ街中を走らせていると、やはりボディサイズが気になってくる。車高が高く見晴らしがいいとはいえ特に2mを超える全幅は注意が必要だ。最も大変だったのはコインパーキングで、多くの場所で枠線内はもちろん、フラップ板の側面とホイールがギリギリになってしまい、ホイールを擦らないように慎重に入庫することが必要だった。やはりこのサイズになると、どうしても駐車に関してのストレスが発生してしまうのは致し方なかろう。

●リヤゲートは上下に分割している。開けるときは上を開けてから、下のロックを外す
この全幅以外では、街中では格段に使いやすくなった。まずアイドルストップからの再始動が非常にスムーズになり、これまでのようにドンというショックとともにエンジンがかかることがなくなった。また、ブレーキのフィーリングも停止寸前に少し食いつくような感じが伴い、踏力のコントロールがしにくかったものが、はるかに自然になっていた。
●ラゲッジルーム床下にはサブトランクも備える
一方で、視認性に関して進歩は見られなかったのは残念だ。具体的にはドアミラーが相変わらずピラーからのマウントとなっているのだ。近年では前方左右の視界を確保するために、ドアにマウントしAピラーとドアミラーの間に空間を作ることで視認性を向上させているクルマが増えているのだが、BMWに限ってはいまだにこの方式が採用されていない。特に右折時の歩行者等はドアミラーの死角に入りやすくなるので注意が必要である。
●運転席側のミラー。鏡面も大きいので、死角になりやすい

●助手席側のミラーも、運転席側と同様。死角になりやすいので注意が必要だ

光る! 6気筒ディーゼル

X5で高速に乗り入れると水を得た魚のように生き生きと走り始める。特に最高出力265ps/4000rpm、最大トルク620Nm/2000〜2500rpmという性能を発揮する6気筒ディーゼルターボエンジンは、静粛性も高く、何よりもスムーズだ。シルキーシックスとまではいかないが、ディーゼルとしては圧倒的なスムーズさを備えている。その印象は高回転域まで変わらず、とても気持ちのいいエンジンに仕上がっている。
●3リットルのストレート6ディーゼルターボを搭載。トルクはなんと620Nm!
 高速での安定性は、街中で感じたしなやかさが少し裏目に出るようで、ふわつく印象でクルマが落ち着かず、あまりフラット感がない印象を受けた。特にアダプティブモード、あるいはコンフォートモードでこの傾向は顕著であるが、スポーツモードを選択するとこの傾向は解消する。じつはこの状況はワインディングでより顕著であった。そこでもスポーツモードを選択するとクルマが二まわりほど小さく感じられ、思った通りのラインをトレース。アクセルレスポンスも向上し、きびきびと走る様は、まさに駆け抜ける喜びといえるものだった。安全運転支援機能では、3シリーズに続き3眼カメラを備えたこともあるので、アクティブクルーズコントロールを積極的に使用した。短・中・長距離をそれぞれのカメラで撮影するとともに、1秒で2兆5000億回の演算能力を持つ画像処理プロセッサーを採用することで、より正確なアシストができるようになっているこのシステムの大きな特徴は高速道路渋滞時ハンズオフアシストだ。しかし残念ながらこのテスト車には備わっていなかったので、これまでの2眼のものと性能差は感じられなかったことを報告しておく。ただ、これまで経験していなかったこととして50Km/h以下の速度域で若干車線内を蛇行する傾向が見られたので、今後の調整に期待したい。 

ちょっと気になるレイアウト類

使い勝手に関しては前述のミラー以外に気になった点があったので、ここでまとめておこう。まずはヘッドアップディスプレイの位置だ。167cmのドライバーがシートポジションを合わせ、ヘッドアップディスプレイの位置をもっとも高くしても、下半分くらいメータークラスターに蹴られてしまうのだ。これまでBMWのヘッドアップディスプレイでこういった経験はなかったのでX5固有の問題だと思われるが、小柄な人だとこの機能そのものが使用できない可能性も高い。
また、ステアリングスイッチの配置も気になる。オーディオ関連のスイッチが右側にまとめられているのだが、実際のオーディオ関係はセンターのモニター画面が中心なので、右手で操作しながら左側を見るということになり、違和感を覚えた。
●タコメーターの逆回転も違和感がある人はいるだろう
運転席からの見晴らしは3シリーズ以降のBMWとほぼ共通だ。特にセンターコンソール周りはこれまでの物理スイッチの上にピアノブラックの樹脂の板で覆われ、それぞれのスイッチを押そうとするとこの板全体が動き、品質の高さはあまり感じられない。
●シフトレバーはクリスタル仕様
最後にSUVであるから悪路も走ることもあろう。その時の乗降の際、サイドシルがドアに覆われずむき出しなので、汚れがパンツの裾やくるぶしあたりにつきやすいのだ。セダンタイプであれば車高が低いので大きく跨ぐなどでクリアできるが、SUVの場合は車高が高いのでどうしても汚れが付きやすくなってしまうので、ぜひ一考をお願いしたい。
●雨の日のカット。サイドシルの最下部がドアで覆われていないため、汚れている。これは乗降時に気づかないと、服が泥で汚れる可能性がある。特にロングスカートの女性は気をつかう場面だろう
 

燃費は優秀!

今回の燃費についてご報告しておこう。カッコ内はWLTCモード燃費だ。市街地:9.3km/リットル(8.7km/リットル)郊外路:10.4km/リットル(11.8km/リットル)高速道路:14.5km/リットル(13.7km/リットル)車重2トンを超えるSUVとしては優秀な数値といえ、特に街中でこの値をキープしたのは驚きだ。つまり、エンジンとトランスミッション、そしてxDrive(4WDシステム)が最適にコントロールされている結果といえる。 

質感の向上が大きなテーマ

さて、4世代目となったX5のポイントについてBMWブランドマネジメントディビジョン・プロダクトマーケティング プロダクトマネージャーのデックスビクター・ファンウネンさんに話を聞いた。Q:今回のフルモデルチェンジのポイントについて教えてください。デックスビクター氏(以下敬称略):まずBMWですから走りにこだわりました。そのうえでインテリアにもこだわり開発されています。これはこのセグメントを越えたクオリティを提供したいと考えたからです。そもそもBMWはエンジニアリング寄りのメーカーというイメージが強いでしょう。しかし特に新しい世代はクオリティの高い内装にこだわっています。そこでエンジンには一切妥協なく、そのうえでユーザーの声を聞いてもう少しラグジュアリーな空間を作り出すことがX5としての大きなポイントとなっているのです。Q:先代のX5ユーザーから見るとものすごくラグジュアリー方向に振ったように見えますね。デックスビクター:実際にユーザーと話をしてみたのですが、確かにやり過ぎ感はあるかもしれません。もう少し普通でもいいのではないかというお客様もいらっしゃいますが、やはりこの価格帯であればこのぐらいの装備と質感を持っていないとダメだという方が多いのです。
●フロントシート

●リヤシート
 Q:内装のクオリティは3シリーズから一気に変わりましたね。ただしクオリティという面では3シリーズ以降のシフトレバーまわりは“?”と思ってしまいます。その理由はピアノブラックで確かに見た目は美しいのですが、触ると表面全体がペカペカと動いてしまうからです。それは品質感として少々疑問に感じます。また、これまでは物理スイッチが独立して付いていたので、その配置さえ覚えればブラインドタッチが可能でしたが、今のタイプでは出来なくなってしまいました。デックスビクター:確かにピアノブラックに統一したことによって見た目は良くなっていますし、仕様によってはギヤレバーにクリスタルを採用しています。このあたりのレイアウトに関してですが、現在クルマがスマートフォン化しており、今後音声入力が主流となりボタンを押す必要がなくなる時代が間もなく来るでしょう。今はそこに行く途中と考えてください。まずは見た目を含めたクオリティの高さをわかりやすく表現した結果なのです。Q:確かに触感は前に比べるとすごく良くなっていますね。デックスビクター:はい、樹脂部分も安っぽさはなく品質感も高くなっていると思います。 

X7との差別化はコンセプトの違いがキー

Q:今回X5のフルモデルチェンジ後それほど空かずにX7がデビューしました。この2種類をどのように差別化するのでしょうか。デックスビクター:同じプラットフォームを使っていますので、単に7人乗りか5人乗りかの違いしかないという考え方もあります。しかし、X7とはコンセプトがそもそも違います。X5はステアリングを握って楽しく走る、まさに走る歓びを提供しているクルマであるのに対して、X7はプレステージ感のあるクルマ。ジョイオブライフ、到着する喜びをもたらすクルマです。ドライバーだけでなく同乗者全員が快適に目的地に到着するクルマという位置づけです。https://driver-web.jp/articles/detail/17870/Q:つまり運転を楽しむのであればX5。家族で長距離旅行に行くのであればX7ということですね。デックスビクター:そこに加えてX5に3列目のシートをオプションで選択してもワンマイルシートレベルです。しかしX7の場合は長時間3列目に座ることが可能という大きな違いがあります。もっともフォーカスされるべきはキャプテンシートなのです。2列目に独立したシートがあるかないか。つまりキャプテンシートがあるX7はショーファーカーとしても違和感がないような仕様になっているのです。先代X5に乗っているユーザーもX7を見たいとディーラーに来ます。セールスマンがお客様の要望をきちんと聞き出して、お客様のニーズに当てはまっている方を勧めるようにしています。もっともX7は年内の輸入分はすべてオーダーが入っていますが。  3代目から4代目への進化はかなりドラスティックといってもいいだろう。走りに関しては先代譲りで、SUVでありながらスポーティな走りを楽しめる。この点はまさに駆け抜ける喜びを標榜するBMWならではだ。その一方、3シリーズ以降のナビゲーションのシステム変更による使い勝手の悪化なども顕在化してしまった。例えば目的地設定で駅などを入力し表示させたあと、そこから位置の微調整が可能だったものが、今回はできなくなった。そういった細かい使い勝手をもう一度見直すことで、さらに質の高い魅力的なブランド、クルマに仕上がるだろう。BMWなどのブランド、特に今回のX5などは新規ユーザーよりも既納ユーザーのほうが圧倒的に多いだろうことを考えると、少々詰めの甘さを感じてしまうのだ。ぜひもう一歩踏み込んでユーザーの使い勝手も含めた開発を望んでおきたい。そこをクリアできさえすれば、ほかにはないスポーティな走る喜びという魅力を持ち合わせ、ユーザーの使い勝手も考えたSUVに仕上がるからだ。 <文&写真=内田俊一 text & photo by Shunichi Uchida> 
■BMW X5 xDrive 35d Mスポーツ(4WD・8速AT) 主要諸元 【寸法・重量】 全長:4935㎜ 全幅:2005㎜ 全高:1770㎜ ホイールベース:2975㎜ トレッド:前1685/後1695㎜ 最低地上高:215㎜ 車両重量:2190㎏ 乗車定員:5人 【エンジン・性能】型式:B57D30A 種類:直6DOHCディーゼルターボ 最高出力:195kW(265ps)/4000rpm 最大トルク:620Nm(63.2㎏m)/2000〜2500rpm 使用燃料・タンク容量:軽油・80リットル WLTCモード燃費:11.7㎞/リットル 最小回転半径:5.9m 【諸装置】サスペンション:前ダブルウイッシュボーン/後マルチリンク ブレーキ:前後Vディスク タイヤ:前275/40R21/後315/35R21(オプション装着車) 【価格】999万円(消費税率8%込み)
BMW オフィシャルサイト https://driver-web.jp/articles/detail/14390/ 

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