2019/02/15 ニュース

直6仕様は前後重量配分50:50じゃなかった!? 新型スープラ、直4にも期待!

新型スープラがデトロイトショーで正式お披露目となってから約1カ月。みなさんはどんな印象をお持ちだろうか?早く日本仕様が知りたいところだが、おそらく4〜5月にその全貌が明かされそうだ。それを前に、現時点でわかっていること、聞き出せたことをお伝えする。聞き手は、モータージャーナリストの島下泰久氏。インタビューの相手は、もちろんスープラ開発主査、多田哲哉氏だ!(編集部)
●デトロイトショーの発表の場では、豊田章男社長みずからスープラへの思いを語った
  
●多田哲哉氏。86/BRZのコラボスポーツカーに続き、BMWとの共同開発で生まれた新型スープラでも主査を務めた
 島下 いよいよ市販モデルが登場しましたが、改めて新しいスープラが、トヨタとBMWとの間でどのように開発されたのかを教えてください。多田 2012年5月に初めてミュンヘン(のBMW本社)に行きまして。じつはこのとき、86の欧州ジャーナリスト向けの試乗会をやっていたんですが、某役員からすぐに行ってこいと言われて、抜け出して行ってきたんです。そのときはまだスープラをやるとは決まっていなかったんですけどね。共同開発が決まってからは、最初まずはBMWとトヨタ、どちらのルールでやるのかを決めるところから話が始まりました。開発のやり方ですね。アウトラインの策定、意思決定のプロセス、だれが決断する人で、だれが責任を取る人かなどなどを決めるのに、まず1年半。それからですよ、普通のクルマの開発が始まったのは。島下 トヨタ、そして多田さんはすでに86/BRZでスバルと共同開発の経験があったわけですが、それでも簡単ではなかったんですね。多田 一方でね、86/BRZはなるべく同じ部品で作ろうとしたんで、今回もそうなるのかと思ったら、「そんな中途半端なの作ってどうするんだ。お互いに本当に作りたいものを作ろう」って言われてね。そのなかで両社で使えるものは使うという話になりました。フラストレーションはなかったですよね。「Z4はこうだから、スープラもこうしてほしい」みたいのはなくて、むしろ「それがやりたいなら、うちのコレを使ったほうがいいぞ」みたいなこともあったりしてね。
●インタビューアーの島下氏は、新型Z4にも試乗済み。スープラとの違いに関しては、「driver」2019年2月号に掲載
島下 ではBMWとのコラボレーションはうまくいった、得たものはあったという感触ですか?多田 まだ起承転結を経験していないじゃないですか。今のところ、違いはわかりました(という段階)。マーケットに導入したあと、色々残ってくるんだろうと思います、お互いに。例えば自分たちの常識では、彼らは何でこんな無駄なことをやるんだろうっていう部分もあったわけです。でも、そのうち、そうか、なるほどこういうことだったんだと理解できる。そういうことがいっぱいあるんだろうと思うんです。島下 共同開発というなかでスープラならではの味、トヨタ車としての味という部分は、どんな風に実現していったんでしょうか。多田 われわれのテスターであるダーネンス(ベルギー人)。彼がすべて決めるというかたちにしました。彼はC-HRなども手がけてトヨタの走りを知っていて、かつドイツ語でBMWとやり取りができる。彼ととことん話して、その上で彼の感じたとおりに仕上げさせたんです。個人的にはパワートレーン。ターボラグがとにかく嫌だったので、WRCのラリーカーが参考になりましたね。パワーが限られている分、いかに速くフルブーストになり、トルクが出るかというエンジンじゃないですか。それとAT。とにかく変速スピードだけを追求して、ショックはまったく気にしませんでした。島下 それはいわゆる“トヨタ・スタンダード”には合わないんじゃないですか?多田 そうですね。でも気にしなかったのは86でもすでに実績がありますから(笑)。スポーツとノーマルのモード切り替えもあるので、クレームは無いでしょう。VSCも完全オフにできます。86では(それができずに)不評でしたので。島下 デザインについても伺いたいです。皆、当然コンセプトカーのFT-1のイメージを重ねる部分があると思うのですが、最初からこの方向で行くと決まっていたんですか?
●2014年のデトロイトショーに出展された「FT-1」
多田 いや、それは決まっていなかったですね。トヨタのデザイン審査では、最初ざっくり3つくらいの基本アイディアを並べるんですが、そのなかには全然違うアプローチのクルマもありました。じつはアメリカで評判がいいと聞いて、FT-1をCALTY(トヨタの米国デザインスタジオ)に見に行ったんですが、あれは量産とはほど遠いモデルで、サイズがかなり大きい。あのイメージを残すって言うのは簡単だけど、さすがに無理じゃないかというのが最初の印象だったんです。だから他の案で、スープラの形をしたものがあればいいなと思っていたんですが、結局、FT-1を系譜としたデザインが『あっ、これいいじゃん』って感じになって始まったんです」島下 やはり先代からの連続性は意識したんですか。多田 連続性は、とても大事にしましたよ。80(スープラ)は世界中に熱狂的なファンがいるので。インテリアも80のタイトな感じ、アレを残したいって思いました。
●日本では2代目、北米では4代目に数えられるスープラ(A80)。
島下 今はプロトタイプの試乗記が自動車メディアをにぎわせていますが、ウェット路面での試乗になった日があったこともあり、操縦性がややシビアという評価も出ています。ですが多田さん、確かあのときすでに、市販までにもう一度アップデートが入るという話をされていたと思います。具体的に、どこに手が入るんですか?

●まだ偽装車の段階ではあったが、新型スープラのプロトタイプに試乗。ぜひ動画でもチェックしてほしい多田 ひとつはステアリングフィール。EPS(電動パワーステアリング)の細かい調整ですが。あとバンプラバーの当て方があれは最終ではないので。ここがうまくいかないと、限界の挙動がトリッキーになるのはある程度わかっていたので、そこのアップデートはもう一回あります。今現在できているクルマは、そこのところは大丈夫。島下 それは形状ですか、材質を調整するのですか?多田 バンプラバーは別に付いているのではなくて、ショックアブソーバー内蔵のものです。じつはアブソーバーは今回、モンローを使っています。モンローって昔からあるけれど、日本の人にあまり馴染みがないじゃないですか。今回はね、このモンロー自体をみなさんにご紹介できたらいいなと思っていて。多分ね、みなさんも興味をもってくれると思うんです。島下 モンローというと、今はテネコ社ですよね。確かバルブはオーリンズで。多田 はい、ブランド名はこちらのほうが日本では馴染み深いですよね。今、会社の経営が変わってきているので、日本での発売のときには、会社名が変わっているかもしれませんが。島下 モンローのショックアブソーバーは何がよかったんですか?多田 もうね、モノが違いますね。大変にいい。特に微低速の動きとか、「これいいじゃん!」って。走り出しのヒタヒタヒタって感じが、すごくクオリティーが高い感じがします。島下 最近のトヨタ、GRの傾向からして、ザックスかなと思っていました。多田 まあ、いつも同じじゃつまらないですから。日本のほうはショックアブソーバーにすごく関心が深いよね。それがすべてと思っている人もいるくらい(笑)。そういうなかで「おおっ、いいのがあった」って。ネームバリューがないものだと、どうかなって感じると思うんだけど、乗ったら関心が湧くと思うんだよね。島下 最初からいいモノがついていると、アフターメーカーはそれを超えるために相当頑張らないといけなくなりますね。多田 そういう風になるといいな、という感じですね。島下 それも含めて、やはり走りの質の高さというんでしょうか。そこが何より印象的でした。改めてうかがいますが、スープラの目指した走りって、どんなところなんでしょうか。多田 86はドリフトを楽しもうと言ってきたんですが、スープラでは、そういうクルマじゃないってことを伝えたかった。86でクルマを振り回すことを覚えた人たちに、スープラで本物のスポーツカーのピリピリした感じを、そういう世界を経験してほしいなって。最近よく説明に使っているのは、86は訓練機。皆、練習して上手になったので、次はいよいよジェット戦闘機が待ってますよ。でも、結構手強いよみたいなね。
●多田氏は、86は訓練機、新型スープラはジェット戦闘機と称した。新型スープラの最高出力は340馬力。最大トルクは500Nmに達する
島下 今回、4気筒モデルが用意されることが明らかになりました。これは最初から必要だという話だったんでしょうか。多田 最初はスープラは6気筒だって話だったんだけど、86から階段が繋がっていることも大事だよねと。あと、4気筒にするとかなり軽くなるってことがわかったんです。100kg近く軽くなるんで、思った以上におもしろかった。前後重量配分は50:50にしているけど、細かく言うと6気筒はフロントがちょっと重くて、ドライバーが乗ると50:50になる。けれど、4気筒は素の状態で50:50なんですよ。しかも100kg近く軽くなるので、ダウンヒルは楽しいですね。社内でも腕利きのあるテストドライバーは、「俺は4気筒」だって言ってますよ。島下 いわゆる廉価版ではなくて、違うおもしろさを持ったものと思ってもらえるものになっているなら興味深いですね。ところで多田さん、このスープラは購入されるんですか?多田 はい。生まれて初めて自分で作ったクルマ買おうかなって思っています。今まで色々なクルマを作りましたが、じつは買ったことがない。自分が作ったクルマって欠点ばかり覚えてて、乗る度に「あーっ」て思っちゃうんですよ(苦笑)。でも今度は買ってもいいかなって。 ■新型スープラ 日本仕様諸元・RZ(FR・8速AT)全長×全幅×全高(mm):4380×1865×1290ホイールベース(mm):2470前後トレッド(mm):1594/1589車両重量:未公開乗車定員:2人エンジン種類:直6DOHCターボ総排気量:2998cc過給器:ツインスクロールターボ最高出力:250kW(340ps)/5000〜6500rpm最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1600〜4500rpm0〜100km/h加速:4秒3前後サスペンション:ストラット/マルチリンク前後ブレーキ:Vディスク前後タイヤサイズ:255/35ZR19 96Y/275/35ZR19 100Y・SZ-R(FR・8速AT)全長×全幅×全高(mm):4380×1865×1290ホイールベース(mm):2470前後トレッド(mm):1594/1589車両重量:未公開乗車定員:2人エンジン種類:直4DOHCターボ総排気量:1998cc過給器:ツインスクロールターボ最高出力:190kW(258ps)/5000〜6500rpm最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1550〜4400rpm0〜100km/h加速:5秒2前後サスペンション:ストラット/マルチリンク前後ブレーキ:Vディスク前後タイヤサイズ:未公開・SZ(FR・8速AT)全長×全幅×全高(mm):4380×1865×1295ホイールベース(mm):2470前後トレッド(mm):1609/1616車両重量:未公開乗車定員:2人エンジン種類:直4DOHCターボ総排気量:1998cc過給器:ツインスクロールターボ最高出力:145kW(197ps)/4500〜6500rpm最大トルク:320Nm(32.6kgm)/1450〜4200rpm0〜100km/h加速:6秒5前後サスペンション:ストラット/マルチリンク前後ブレーキ:Vディスク前後タイヤサイズ:未公開  〈文=島下泰久〉  

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