2019/01/22 ニュース

スバル初のPHEV「クロストレック ハイブリッド」がアメリカ専用なワケ

HOVレーンを1人乗りで走れるEVやPHEV

カリフォルニアのフリーウエイには渋滞緩和を目的とした「HOV(High Occupancy Vehicles)レーン(通称カープールレーン)」がある。そもそもの目的(この有効性についての議論が絶えないのも事実だが、それは置いておいて)から、基本的にカープール(乗り合い)やバスといった複数人が乗車した車両、そしてバイクがこのレーンは走れる。ただし例外として、EVやPHEVなどのゼロエミッション車両で「クリーン・エア・ビークル・デカール」が貼られていれば、1人乗車での走行が許されているのだ。日々の渋滞にうんざりしているカリフォルニアのドライバーにとって、これはかなり魅力的。プラグインを含むEVに乗り替える際、環境への配慮や燃費の優位性もさることながら、この特典が決めてとなってEVに乗り換えた人は僕を含めて少なからずおり、買い替え時の補助とあいまってクリーン・エア・ビークルの販売を後押ししてきた。 

2019年から認可基準がより厳しくなった

EVの登録車両は年々増えていることから、これまでも段階的に認可基準が変動してきたのだが、さらに条件が厳しくなった。今年(2019年)の1月1日に、これまで流通してきた白いステッカーが無効となり、新たに赤いステッカーを貼った車両のみが1人での走行が可能ということになったのだ。
●カリフォルニアのフリーウエイにあるHOVレーンは、現在この「クリーン・エア・ビークル・デカール」が貼られた車両なら1人乗りで走れる
2年前に購入した我が家のEV「フィアット500e」もこのままでは1人乗りでHOVレーンを走れなくなってしまう。そういったこともあって、買い替えを検討しはじめたところだが、まっさきに候補にあがったのが、2018年末のLAオートショーでデビューした「スバル クロストレック ハイブリッド」だ。車名は“ハイブリッド”だが、これはスバル初のプラグインハイブリッドでアメリカ専用モデルとなっている。SUBARU Crosstrek Hybrid
SUBARU Crosstrek Hybrid
●ラグーンブルーパールはハイブリッド専用外装色として設定

「クロストレック」のPHEV化は需要にミート

個人的な話になるが、LA郊外のオレンジカウンティ丘陵地にある我が家。フィアット500eは毎日の足としては申しぶんないのだが、LA市街地への往復となると途中の充電が必須。やや不自由なところもあった。スバル クロストレック ハイブリッドはAC充電ポートを備えており、EVモードで17マイル(27km)の走行が可能だという。ご近所の走行はEVモードのみでこと足りそうだし、そのまま遠出も可能だ。SUBARU Crosstrek Hybrid
●ボディ左側に設けられた充電ポート
SUBARU Crosstrek Hybrid
●普通充電コネクターにより充電する。120V12Aもしくは240V16Aに対応。家庭用コンセントからの充電も可能だ。スマートフォンから遠隔操作で充電設定を変更できる
ピュアEVではなくPHEVなのだが、なにしろ“スバルで初”ということでメーカーごとに割り当てられた補助金枠が使える。これに加え、先出の“赤いステッカー”を貼ることもできるのだから、言うことなしだ。SUBARU Crosstrek Hybrid
しかも、クルマそのものがすばらしいのだ。モーターとバッテリーを含めたPHEVユニットはトヨタから供給されるが、ボクサーエンジンと4WDシステムはクロストレックと同じ。まさに“いいとこどり”のPHEVなのだ。プリウスよりも強力なカムリHV用のモーターをCVTに組み合わせ、機械的に駆動を前後輪に伝える仕組みとなっている。バッテリー残量が少なくなっても4輪を最適駆動できるのが強みだ。SUBARU Crosstrek Hybrid
●燃焼効率を高めた新開発の専用2L水平対向4気筒直噴エンジン+シンメトリカルAWDに、トヨタから供給されるPHEVユニットをドッキング
 

トルクフルで実用性も十分

実際に乗ってみると、EVモードでの加速はガソリンモデルよりもトルクフル。以前に試乗した旧型のXVハイブリッドよりもEVとエンジンの切り替えがスムーズでまったく気にならない。この制御のシームレスさは、さすがトヨタの技術といったところだ。SUBARU Crosstrek Hybrid
●エンジンは最高出力137馬力/最大トルク18.5kgm、駆動用モーターは118馬力/20.6kgmで、システム出力は148馬力を発揮する
ラゲッジスペース床下にバッテリーを搭載することから、床面が60mmほど高くなっているのだが、それでも大型スーツケース2個を楽に積載でき、使い勝手も悪くない。SUBARU Crosstrek Hybrid
●駆動用リチウムイオンバッテリー(総電力量8.8kWh、容量は25Ah)を荷室下に搭載するするため、荷室のフロア高が60mm高くなる
もう心は決まっているのだが、問題はトヨタからのユニット供給数の関係上、月産が300台のみというところ。間違いなく人気が出るであろうカリフォルニアを中心にしばらくは売り切れ状態が続きそうな予感。我が家は「首尾よく入手できるか!?」だけを心配しているところなのだ。 SUBARU Crosstrek Hybrid
●クロストレック ハイブリッドのインパネ。インテリアはブルー基調でコーディネートし、PHEV先進性と特別感を演出。PHEVならではの表示コンテンツや、専用機能追加によって強化されたテレマティクスシステムを搭載
 SUBARU Crosstrek Hybrid
●ブルーを基調に、スポーティさと精緻さを表現した専用メーターを採用
SUBARU Crosstrek Hybrid
●ライトグレーとネイビーのコンビシート。ブルーのステッチがあしらわれる
  <文と写真=ケニー中嶋> 

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