2019/01/28 コラム

自動車メーカーだけでは実現不可能? 自動運転開発の鍵は「NVIDIA」が握る!

平成が終わる2019年。クルマもクルマを取り巻く社会も、大きく変わりつつある。そう感じたのが、NVIDIA(エヌビディア)が開催したイベント「GTC(GPU Technology Conference)2018」だった。NVIDIAはアメリカの半導体メーカーで、コンピューターグラフィックス処理や演算処理の高速化を得意とするGPU(グラフィックス プロセッシング ユニット)のメーカーだ。自動運転以外なら、3Dゲームを楽しむ人などはその名を聞いたことがあるだろう。NVIDIAの自動運転パートナー企業は、トヨタ、ボルボ、テスラ、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、アウディ。どの自動車メーカーも自動運転でトップを競いあっているが、その心臓部にはNVIDIAの製品が使われている……かもしれない。
自動運転に関する講演会場には人が殺到。非常に熱気にあふれるイベントだった
 


スバルはレベル2以上の運転支援車や自動運転車の先行開発プラットフォームに、NVIDIAの製品を採用している。実験車にはステレオカメラのほか、単眼カメラやレーダーなどを組み合わせる
 最近は「CASE(ケース)」という言葉も認知度が向上しつつある。CASEはConnected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared&Services(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字を取った造語。そこにもっとも影響力があるのは、自動車メーカーではなくIT企業やメガサプライヤー、NVIDIAのような半導体メーカーなのだ。特にビッグデータとその処理は、IT関連企業が先行している。例えば、最近のクルマでも自動車メーカーがクルマを通じてデータを集めているが、その量は限られている。ところがグーグルなどに代表されるIT企業は、クルマ以外でもあらゆるデータを収集しているため、自動車メーカーはビッグデータの分野ではすでに太刀打ちできない状況になっている。今まではクルマを製造する自動車メーカーが自動運転の主導権をにぎっていたが、そうではない現実が近づきつつある。NVIDIAが開催したGTC2018というイベントは、東京の新高輪プリンスホテル 国際館パミールを借り切って行われた。ご存じの方も多いと思うが、ここは国際会議なども行われる大きな会場。ここでNVIDIAのプライベートイベントであるGTC2018を開催したというだけでも驚きだ。自動車メーカーも自動車や技術発表会などをホテルで開催することはあるが、大型施設を1メーカーが借り切ることは最近ない。開催会場を比べただけでも、最近の業種間の勢いの差が明らかだ。イベントのGTC2018の内容は、自動車関係のテクニカルセッションと各分野の講演が中心。自律(自動)走行車やスマートシティ、ヘルスケア、ビッグデータ、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、VRなど、今まではクルマと直接関係ないと思うような分野まで、自動運転の開発に関係してきている。ここにはNVIDIAの製品を使って、自動運転関連の技術開発を進めるソニーやパナソニックなどの日本企業の多くも展示を行っていた。公演で人気を集めていたのも自動運転に関係したもので、会場の廊下は講演を待つ人の長蛇の列。一般ユーザーがいないイベントで、これほどの熱気に包まれたのは、久しぶりの取材感触だった。以前、ある自動車メーカーの元エンジニアから聞いた言葉を思い出した。「自動運転は、すでに自動車メーカーだけの開発力では実現不可能だ」このエンジニアはEVや自動運転の開発を行っていただけに、その言葉の意味と重さをこのイベントでより理解することになった。NVIDIAの技術や製品、サポートなくして、自動運転の未来はないと言えよう。 

ヤマハ発動機のゴルフカーベースの低速走行車両である「ラストマイルビークル」。旅行などでのラストワンマイルの移動や荷物運搬での自動運転車両
 
建機大手のコマツはNVIDIAと協業し、AIを導入することで建設現場の安全と生産性を高めている。建設現場の安全・生産性を向上させるソリューション事業「スマートコンストラクション」をすでに2015年より開始
 
名古屋大学発の自動運転ベンチャーTier IV(ティアフォー)の実験車両にもNVIDAの製品が使用されている。GPUを使い、カメラとライダーによって車両周辺の走行環境を把握する



 (文と写真=丸山 誠)

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